骨の髄まで私に尽くせ。考察【ネタバレ】

長堀かおるさんの「骨の髄まで私に尽くせ。」の考察です。
適時更新していくので気長に待っていただけると嬉しいです。

 

骨の髄まで私に尽くせ。の面白さはヒロインさやかの心の闇の深さにあると思います。
黙っていればものすごい美人なのに、言う事やる事全部エグい。
かつてこんなエグいヒロインがいたかと言われると、なかなかいないですよ。
そこら辺のホラーよりよっぽど闇が深いです、この人。

 

 

仲村さやか

骨の髄まで私に尽くせのヒロインで、間違いなく一番ヤバい人。
さやかは周到に罠を張り巡らせるタイプなので、全体像が見えないんですよね。
物語で徐々に明らかになることもその一端に過ぎない感じです。

 

一番ヤバかったのが10話のラスト。
ここでは回想で、藤田がさやかに再会して土下座したときが描かれています。
2話でいきなり土下座されて、うろたえるばかりのさやかが描かれていましたが、10話の回想ではさやかは嗤ってます。
つまり、この偶然に見える再開も仕組まれていた可能性が高いという事。

 

でも、その割には藤田の家の場所や家族構成を知らなかったりと行動がちぐはぐなんですよね。
だからこそ余計に怖いのですが・・・

 

Twitterで作者の長堀かおるさんがシロツメクサの首飾りを持ったさやかを描かれていますが、これが一番さやかの本質を表しているような気がします。
シロツメクサの花言葉は「私のものになって」「幸福」「約束」「復讐」。
最後だけ不穏な言葉ですが、これにはわけがあります。

ある女の子が思いを寄せていた仲良しの男の子に「大人になるまで私を思って、将来私と結婚してね(私のものになって)」と約束を交わしました。
ところが、男の子は大人になって約束を忘れてしまい、叶わぬ思いが女の子を「復讐」へと駆り立てました。

 

シロツメクサに込められた物語を読むと、なんとなくさやかの行動にそっくりです。
さやかと藤田が再開した時点で、藤田はすでに結婚していますが、さやかは藤田が離婚してくれることをどこかで期待している節があります。
そのため、10話まではさやかの行動は「かまってちゃん」程度(かなり嫌がらせっぽいのもありますが)で済んでいました。

 

ところが、10話で藤田に別れ話を切り出され、さやかは本格的に狂っていきます。
手始めに数か月かけて美奈子に近づき、家に招かれるほどの間柄になってしまいます。
ここからさやかの本格的な復讐が始まります・・・

 

 

藤田一樹

説明不要の半端男。
優柔不断でそのせいで周囲を傷つけまくるのですが、さやかを狂わせるトリガーでもあったりします。
藤田の最大の失敗は学生の頃にやってしまった事ではなく、中途半端な浮気な気持ちでさやかと関係を持ってしまった事です。
これのせいで、さやかに期待を抱かせることとなってしまいます。
そして、その期待をあっさり打ち砕いてしまう藤田。

 

もう弁解の余地なしのクズです・・・

 

 

骨の髄までの各話タイトル

どう見ても、その話におけるさやかの本心です。
一見すると話の内容と一致していないタイトルも多いのですが、全体を俯瞰してみるとさやかの心の声だということに気がつける仕組みになっています。
序盤から結構穏当ではないタイトルが並んでいますが、しっかり時系列を整理しながら見直してみてください。
さやかのヤバさがおぼろげながら浮かび上がってきます。

 

少なくとも3話〜5話時点ではさやかは藤田のことを射止められると思っているようです。
それが6話であっさり裏切られ、だんだん「私は可哀想なの」になっていきます。
そして10話〜12話で一気にさやかの闇が表ざたになってきます。
特に12話の「一生を賭けて、後悔させてやる」は、さやかの意図が恋愛から復讐に変わった瞬間でしょうね・・・

 

 

さやかの家庭環境

さやかは決して良いとは言えない家庭環境で育ったようです。
父親は女と不倫して離婚。
さやかは母親に引き取られて他所の街に引っ越してしまいます。
母親にはそこそこ大切にされていたようですが、それも「ある事件」が起こるまで。
この事件でさやかは母親に「泥棒猫」呼ばわりされ、ショックで家を飛び出してしまいます。
その後はあまり詳しく描かれていませんが、概して不幸な境遇だったようです。

 

こうしてみると、さやかが歪んでしまったのは決して藤田ひとりの責任ではないのです。
しかし、一番最初のきっかけを作ってしまったという意味では、さやかのトラウマにおける藤田の存在は大きかったのでしょう。

 

骨の髄まで私に尽くせ。

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著者:長堀かおる


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